進捗状況
直接乱流観測による北太平洋亜寒帯海域乱流強度分布
西暦2000年以前には、観測が困難であったために、中層までの乱流の直接観測は数えるばかりしか行われていなかった。風による混合が強い表層を除いて、観測される海洋の亜表層・中層では乱流鉛直混合は極めて小さく拡散係数にして10-5m2s-1(右図で緑色)のオーダーであった。本研究では、3年間で延200日以上300キャスト近い乱流計直接観測を北太平洋亜寒帯海域を中心に展開し(下表)、千島列島・アリューシャン列島海域でその10-1000倍(黄色から赤)の乱流鉛直混合が生じていることを実証しつつある。
船・航海名 | 期間 | 日数 | 海域 | 観測項目 | 乱流計 | |
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1 | 淡青丸KT08-7 | 2008/4/23-5/7 | 15 | 黒潮続流域 | 乱流計・硝酸計 | 22 |
2 | 白鳳丸KH08-2 | 2008/7/29-9/16 | 50 | 北西太平洋亜寒帯・天皇海山・155E | 乱流計・硝酸計 | 21 |
3 | 淡青丸KT09-3 | 2009/4/2-18 | 17 | 伊豆海嶺・黒潮・黒潮続流域 | 乱流計・硝酸計・マイクロライダ・係留 | 16 |
4 | おしょろ丸北洋航海 | 2009/6/2-7/5 | 34 | 北太平洋亜寒帯・アリューシャン・ベーリング | マイクロライダ・係留系設置 | ー |
5 | 白鳳丸KH09-4 | 2009/8/12-9/25 | 45 | アリューシャン・ベーリング海 | 乱流計・硝酸計・マイクロライダ・鉄・係留系回収 | 146 |
6 | ロシア船クロモフ | 2010/5/17-6/13 | 28 | 千島・オホーツク海 | 乱流計・硝酸計・マイクロライダ・鉄 | 25 |
7 | 淡青丸KT10-19 | 2010/9/3-14 | 12 | 東シナ海・南西諸島・黒潮 | 乱流計・マイクロライダ | 20 |
8 | 白鳳丸 | ー | 南極ケルゲレン海台 | 乱流計・マイクロライダ | 3 | |
9 | 白鳳丸KH11-3 | 2011/2/25-3/11 | 15 | 伊豆海嶺・黒潮・黒潮続流域 | 乱流計・硝酸計・マイクロライダ・係留系設置 | 43 |
計 | 216 | 計 | 296 |
千島列島ウルップ海峡における乱流観測
- 伊藤幸彦:ウルップ海峡における流動・乱流構造観測.月刊海洋号外50、77-84、2008
- S. Itoh, I. Yasuda, T. Nakatsuka J. Nishioka, and Y. N. Volkov 2010:Fine- and microstructure observations in the Urup Strait, Kuril Islands, during August of 2006. J. Geophys. Res. Oceans, 115, C08004, doi:10.1029/2009JC005629
千島列島ウルップ海峡においてロシア船を用いて初めての乱流観測が行われた。潮流がシルを下る時に、その下流側で大きな乱流が発生する(下図a)こと、また、シルを駈け上る時に発生する短周期の内部波に伴い乱流が強くなる(下図b)ことが示唆された。特に、大潮時の太平洋側では、通常の1000-10000倍の鉛直拡散が観測され、海面から600m付近まで海水が一様化されていた。このように千島列島付近での乱流鉛直混合は、海洋中の物質分布や海洋循環に大きな影響があることが明らかになった。
また、乱流エネルギー散逸率(乱流強度の指標)は潮流の鉛直シアーが強いほど大きかったが、その累進制は外洋域の乱流に見られる関係(Gregg 1989)に比べて小さいことがわかった。
千島列島周辺の潮汐数値実験による乱流混合推定
- Tanaka, Y., T. Hibiya, Y. Niwa, and N. Iwamae (2010), Numerical study of K1 internal tides in the Kuril straits, J. Geophys. Res., 115, C09016, doi:10.1029/2009JC005903.
- Tanaka, Y., T. Hibiya, and Y. Niwa (2010), Assessment of the Effects of Tidal Mixing in the Kuril Straits on the Formation of the North Pacific Intermediate Water, J. Phys. Oceanogr., 40, 2569-2574.
大規模な順圧潮汐が北太平洋からオホーツク海へと流入する際に、最も主要なK1潮汐について約16 GW、主要4分潮の合計で約37 GWのエネルギーがクリル海峡域で内部波へと変換される。特に日周潮K1潮汐については、励起される内部波の大部分は、遠方へ自由に伝播できない沿岸捕捉波となり、各島の周りを時計回りに伝播しながらそのエネルギーを散逸過程へと失っていく。このため、順圧潮汐から内部波へと変換されたエネルギーの大部分が海峡内の乱流混合に寄与する(上図:見積もられた単位面積当たりエネルギー散逸率分布(色)、数字四角範囲での散逸量)。また、沿岸捕捉波は海底近傍に強い流速シアーを生み出すことから、強混合域は海底近傍に強く限定される(右図:沿岸捕捉波の流速構造)。これらの結果に基づいて最終的に見積もられた鉛直乱流拡散係数は、クリル海峡全域の平均では約25 cm2 s-1 と結論された。
アリューシャンアムチトカ海峡で観測された大振幅内部波砕波と全球非定常風下波分布
- Nakamura T., Y. Isoda, H. Mitsudera, S. Takagi, M. Nagasawa. Breaking of unsteady lee waves generated by diurnal tides. Geophys. Res. Lett., 37, L04602, doi:10.1029/2009GL041456, 2010.
2008年6月に北海道大学水産学部おしょろ丸北洋航海において実施した、アリューシャン列島アムチトカ海峡におけるXCTD・XBT集中観測の結果を解析し(図3段目まで)、(1) 波高およそ200mに達する内部波の砕波の直接観測に成功したこと、(2) 砕波している内部波が日周潮流により生成された非定常風下波であること、および (3) この砕波により外洋の典型的値の10万倍の鉛直拡散が引き起こされること(拡散係数で1.5×104cm2/s)を示した。また、全球において非定常風下波の波高とフルード数を評価し、同様の混合過程が生じていると思われる領域を明らかにした(4段目図)。
風下波の生成条件 | 最大波高 |
親潮の高生物生産性を支える鉄供給過程
- Jun Nishioka, Tsuneo Ono, Hiroaki Saito, Keiichiro Sakaoka, and Takeshi Yoshimura, Oceanic iron supply mechanisms which support the spring diatom bloom in the Oyashio region, western subarctic Pacific, JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, 116, C02021, doi:10.1029/2010JC006321, 2011
- 西岡 純・的場澄人・小埜恒夫・齊藤宏明・坂岡桂一郎(2010)親潮域・混合域の鉄濃度の季節的変動を支配するプロセス:海洋循環・潮汐混合・大気ダスト,月刊海洋、印刷中
親潮水域は栄養塩に富み魚類資源や海洋生物生産を支えているが、親潮が肥沃な理由は良く分かっている訳ではない。特に、北太平洋亜寒帯海域では硝酸塩・ケイ酸塩・リン酸塩など亜熱帯海域で不足しがちな栄養塩は充分存在するにも拘わらず、鉄が不足して生物生産が停止するHNLC(High Nutreint Low Chlorophyll:高栄養塩低植物)海域である。その中でも親潮は中部・東部の亜寒帯に比べて生物生産性が高いが、その原因は良く理解されていなかった。本研究では、北海道沖の親潮を横切る観測ライン(左図)において季節ごとに溶存鉄・栄養塩などの観測を行った結果、親潮の中層に高い鉄濃度を持つ水塊が分布している(右図)ことが明らかとなった。この親潮中層の高い鉄濃度を持つ水塊は、親潮の上流であるオホーツク海の北西部陸棚域で海氷形成に伴い形成される中層水とアムール川に起源をもつ水塊であり、千島列島の海峡域での強い潮汐混合により上下に拡散し、親潮での冬季混合層直下の鉄:硝酸塩比を上昇させることにより、親潮の鉄濃度を上昇させていることが明らかとなった。この過程での鉄供給は大気からの供給を大きく上回っており、オホーツク海での中層水形成及び千島列島での鉛直拡散が親潮への主要な鉄供給過程であることが示唆された。
オホーツク海におけるアルカリ度・pHの上昇と海洋酸性化の緩和
- Watanabe, Y. W., et al. (2009), Inflence of riverine alkalinity on carbonate species in the Okhotsk Sea, Geophys. Res. Lett., 36, L15606, DOI: 1029/2009GL038520.
- 渡辺豊(2011):オホーツク海と太平洋をつなぐ物質循環:潮汐混合のインパクト.月刊海洋号外、印刷中
オホーツク海でのロシア船観測によって、アルカリ度とpHが北西から南に向かって低くなる(図上段)ことから、アムール川から高アルカリ度・pH水が供給されていることが明らかとなった。オホーツク海中層水のアルカリ度とpHは、1999/2000に比較して2006に大きく増加(下段左・中図)しており、この増加はアムール川のCa2+濃度の増加に伴うものであった(下段右図)。このpHの増加はアルカリ度の増加によるものであると考えられ、北太平洋での海洋酸性化の1/5を緩和する可能性がある。大気中の二酸化炭素増加に伴う海洋酸性化が全球的に進んでいると考えられている。しかし、陸域-海洋相互作用によるアルカリ度変化を総合的に考慮しなければ、単純な海洋酸性化としては進まないという定量的証拠を、アムール川・オホーツク海・北太平洋のリンケージを通して示した。
オホーツク海水のフロン濃度に対する千島潮汐混合と海氷形成の影響評価
- Uchimoto, K., T. Nakamura, J. Nishioka, H. Mitsudera, M. Yamamoto-Kawai, K. Misumi, D. Tsumune. (2010) Simulations of chlorofluorocarbons in and around the Sea of Okhotsk: Effects of tidal mixing and brine rejection on the ventilation. J. Geophys. Res., 116, C02034, doi:10.1029/2010JC006487.
千島列島での強い鉛直混合と海氷形成時に放出されるブラインと呼ばれる高塩分水を適切に表現することによって、海水中のフロンCFC12の濃度が良く再現された(左図水平CFC12分布)。このモデルにおいて、大気から海洋のCFC12フラックスを、千島での潮汐混合を無くした場合(右中段)とブライン放出を止めた場合(右下段)を両方入れた場合(右上)と比較したところ、潮汐混合を入れないほうが大きく変化したことから、潮汐混合がより大きな中層へのインパクトがあることが示唆された。
季節鉛直移動する北太平洋亜寒帯域動物プランクトンの移動シミュレーションと炭素輸送
- H. Tatebe, I. Yasuda, H. Saito and Y. Shimizu, 2010: Horizontal transport of the calanoid copepod Neocalanus in the North Pacific: The influences of the current system and the life history. Deep-Sea Res. I, 57, 409-419.
- Y. Shimizu, K. Takahashi, S.I. Ito, S. Kakehi, H. Tatebe, I. Yasuda, A.Kusaka, T. Nakayama, Transport of subarctic large copepods from the Oyashio area to the mixed water region by Oyashio intrusions. Fish. Oceanogr. 18(5), 312-327, 2009
北太平洋亜寒帯海域で優先種であるネオカラヌス属動物プランクトンは、種類により異なる季節鉛直移動することが知られている(左図上からN. cristatus, 中 N. flemingeri 小型、下 N. flemingeri 大型)。水塊配置や表中層の海流場を良く再現する数値モデルの流動場を用いて、鉛直移動を考慮した移動を調べたところ、深く沈降するNCは移動距離が短く、浅い小型NFは長距離移動すること、オホーツク海で1年目を過ごす大型NFはオホーツク海から太平洋に運ばれると中層水の経路に沿って亜寒帯前線以南に輸送され死滅回遊し、炭素のシンクにあると推定された。観測による年間生産量と輸送量は左図のようであり、サンマなどの餌料として充分な量が輸送されていた。
18.6年周期水塊変動の観測事実:ベーリング海
- S. Osafune, and I. Yasuda, 2010: Bidecadal variability in the Bering Sea and the relation with 18.6year perioid nodal tidal cycle. J. Geophys. Res., 115, DOI: 10.1029/2008JC005110.
- 長船哲史・安田一郎(2008)北太平洋亜寒帯域での18.6年水塊変動. 月刊海洋号外50, 41-49.
これまで蓄積された水温・塩分観測データを用いた解析により、ベーリング海のアリューシャン列島付近・東部陸棚斜面域で、1日周期潮汐が強い期間に、表層0-200mの塩分(図右上)が高い、ポテンシャル密度26.5s面深度(図右中)が浅い、水温の鉛直極大が存在する密度27.0での水温(左図e)が低い等、潮汐18.6年振動に対応した潮汐変動が見出された。塩分が表面ほど低い北太平洋亜寒帯海域では、鉛直混合が大きくなることにより表層塩分及び密度が上昇する(図右下左)、水温極大では極大が削られて水温が低下する(図右下右)など、鉛直混合が変動することによる変動として理解できる。
18.6年周期変動気候観測事実:太平洋10年規模振動指数PDO
- Yasuda, I. (2009), The 18.6-year period moon-tidal cycle in Pacific Decadal Oscillation reconstructed from tree-rings in western North America, Geophys. Res. Lett., 36, L05605, doi:10.1029/2008GL036880.
気候・海洋の観測データは長くて100年程度であるため、20年周期の変動が5サイクルしか入らず、18.6年周期変動が含まれているかどうか統計的に明確に述べることが難しい。本研究では、木の年輪から再構成された約300年のPDO時系列(上段左図黒線)を解析したところ、18.6年に統計的に有意なピークをもつスペクトルが得られ、日周潮汐最大から4年目を中心に負PDO、12年目を中心に正PDOが出現する傾向がある(中段左図赤線が平均PDO、青実線95%有意水準、蒼破線90%有意)ことが明らかになった。最近50年のSSTや海面気圧に日周潮汐最大から3年目(中段右図)、12年目(下段右)を中心とする5年の偏差のコンポジット分布は、アリューシャン低気圧等PDOのパターンと良く対応していた。これらの結果は潮汐18.6年振動を手掛かりに気候変動予測に貢献する成果である。
千島列島18.6年周期潮汐混合振動の気候への影響に関する気候モデル実験
- H. Hasumi, I. Yasuda and H. Tatebe, M. Kimoto 2008: Pacific bidecadal variability regulated by tidal mixing around the Kuril Islands. Geophysical Research Letters, 35, L14601,doi:10.1029/2008GL034406,2008
- 羽角博康(2008) 18.6年周期潮汐の気候への影響に関するモデリング.月刊海洋号外50、50-56.
千島列島付近での鉛直混合係数を0.2m2s-1に上げ、その2割を振幅として18.6年周期で振動させた、全球大気海洋結合・気候モデル実験を行い、千島列島周辺での潮汐混合変動の気候変動への影響を評価した。千島周辺での鉛直混合を振動させた実験(VAR)及び変化なしの実験(CONST)とも、卓越変動モード(上段左図)はPDOパターンで共通していたが、周期18.6年のスペクトルピークはVARにのみ現れ(上段中図)、千島列島に局所的に与えた鉛直混合振動の影響が全球の気候変動に影響を与え得ることが明らかとなった。千島列島周辺の鉛直混合の変化は、北太平洋の西岸沿いに伝搬し(下段左図:流速偏差ベクトルと絶対値)、赤道付近の亜表層(下段右図:東西水温偏差断面)を数年かけて東に伝搬し東端に到達後表層にその影響が表れた。千島で与えた鉛直混合最大年から6年後に赤道表層が低温すなわちラニーニャ的になっていた。これは、木の年輪から再構成されたPDO時系列で見られた日周潮汐最大年から4年後に最もラニーニャ的になることと2年ずれているが概ね整合的である。現在観測とモデルの突き合わせを行っている他、千島以外の潮汐による鉛直混合変動を考慮した気候モデルの計算を進めている。
親潮栄養塩・動物プランクトン現存量の長期変動と18.6年潮汐振動の関係
- K. Tadokoro, T. Ono, I. Yasuda, S. Osafune, A. Shiomoto and H. Sugisaki, 2009: Possible mechanisms of decadal scale variations in PO4 concentration in the Oyashio and Kuroshio-Oyashio Transition waters, western North Pacific. Geophys. Res. Letters 36, L08606, doi:10.1029/2009GL037327, 2009
北海道南の100m深水温5°C以下で指標される親潮水の表層(上段中図青線)中層(下段中図青線)のリン酸塩濃度(5年移動平均値)には、表層で減少、中層で増加のトレンド(青色破線)に重なり、18.6年潮汐振動(図の下方のサインカーブ)と同期した変動が見出された。表中層とも、日周潮汐が強い(弱い)時期に栄養塩濃度が低い(高い)という傾向がみられた。4-9月に親潮水域に出現した動物プランクトンN. plumchrus(下段右図)の平均現存重量には、リン酸塩濃度変動・潮汐振動に同期した変動が見られ、日周潮汐が強い(弱い)時期に、バイオマスが低い(高い)傾向が見られた。この原因としては、「日周潮汐が強い時期には、千島列島での強い潮汐混合によって表層塩分が上昇し、その表層水塊がオホーツク海を北へ移動して冬季海氷ができる際に栄養塩の低い表層水から形成される高密度陸棚水DSWが増加し、このためにオホーツク海中層水やその先の北太平洋中層水の栄養塩が低くなる。低い栄養塩濃度の中層水が、千島列島付近の潮汐混合によって表層へ拡散し、そのために表層の栄養塩濃度が低下する。」が挙げられているが、鉄濃度など微量栄養塩の挙動も関係している可能性があり、メカニズムについては今後の課題である。
新しい観測手法の導入・開発:(1) ケーブル付き2000mまでのリアルタイム乱流計測
流速の大きい千島列島周辺・アリューシャン列島周辺及び黒潮・黒潮続流域などの2000mまでの表中層の乱流の直接観測を行うために、可搬式のモータ・ウインチ・ラインプラ―を装備したケーブル付きリアルタイム乱流計測システムを日本で初めて導入し、学術研究船白鳳丸・淡青丸・ロシア船クロモフ号において、乱流計Vertical Microstructure Profiler VMP2000/VMP500を用いた観測手法を構築した。共同利用にも供し始め、500mまで観測可能なVMP500システムは、平成22年度淡青丸KT09-15航海、白鳳丸南極航海で利用された。
新しい観測手法の導入・開発:(2)密度逆転を用いた乱流強度評価手法の検証
- 八木雅宏・安田一郎(2008):千島列島海域における密度逆転を用いた乱流混合観測.月刊海洋号外50,85-92
海水の密度の観測データに現れる密度逆転(左図)の逆転の長さを表すThorpe長さLT及び浮力振動数Nから上の式で乱流エネルギー散逸率を求め、直接観測から得られた乱流エネルギー散逸率と比較し、比例関係が確認された(中図)。密度逆転から得られた間接値を内挿し、直接観測に良く対応する乱流データを再構成できる可能性を示しつつある(右図)。
新しい観測手法の導入・開発:(3) 硝酸計ISUSV3の導入と乱流計を組み合わせた栄養塩乱流鉛直フラックス評価
CTDフレームに取り付け硝酸塩の0-1000mの鉛直プロファイルが得られる硝酸塩プロファイラISUS-V3を導入し、CTD観測と同時に硝酸塩の詳細鉛直プロファイルを取得することができるようになり、黒潮で見出された高栄養塩帯など詳細な硝酸塩の構造を明らかにするのに、威力を発揮し始めた。
新しい観測手法の導入・開発:(4) CTD取り付け型乱流計測手法の開発(マイクロライダ)
乱流は自由落下するセンサで計測するのが基本であるが、水温の微細構造等乱流を反映した水塊構造は、自由落下でない計測でもある誤差範囲で計測が可能であると考えられる。自由落下式の計測では測定困難な海底付近の乱流や、CTDと完全に同期した微細構造を測定するために、CTD取り付け型で6000mまで計測可能なメモリ式乱流センサマイクロライダmR-6000を導入し、自由落下した観測と比較できる観測データを蓄積し、現在解析手法の開発を行っている。
新しい観測手法の導入・開発:(5)自走式微細構造計測システムの開発(水中グライダ+マイクロライダ)
海洋の微細構造・乱流の発生機構を明らかにするためには、鉛直方向だけでなく、3次元的構造を明らかにする必要がある。次世代の海洋計測機器である水中グライダを平成22年度に導入し、23年度にはマイクロライダmR-1000を導入し3次元乱流・微細構造の観測を目指す。