東京大学大気海洋研究所 海洋生物資源部門 環境動態グループ

研究活動

研究活動(富田 博隆)

        

黒潮から大気への水蒸気輸送の実態解明

        
近年、日本では集中豪雨による甚大な被害が多発しています。
豪雨の要因として近年「黒潮」が注目されています。
というのも梅雨前線に伴う強い降雨帯が黒潮流路に沿って分布しており(下図)、黒潮流路上で蒸発が促進され上昇気流が強化される過程が解明されつつあるからです。

とりわけ黒潮フロント周辺のサブメソスケール構造が大気へのインパクトに重要であることもわかってきています。
しかし課題もあります。雨の源である水蒸気量の洋上観測が圧倒的に不足しており、現場での実態解明が進んでいないことがまず挙げられます。
また、これまでの研究は、衛星観測データや現場観測データをモデルに統合した再解析値データをもとに、バルク近似を用いて大気海洋間の水蒸気量の推定を行っており、バルク近似によって生じる不確定性が残ることが挙げられます。
そこで本研究では、海洋から大気への水蒸気供給に対する黒潮の影響を解明することを目的に、(1)船上での直接観測、(2)研究室での解析、の2軸からアプローチしていきます。


1. 新青丸 KS-21-11次研究航海

10日間、「新青丸」に船上し四国沖の黒潮周辺域を調査します。
人生初の船上調査だったため緊張しました。



2. 観測装置の設置

高度10mに風速・温度・湿度計を設置しています。想像以上に10mは高いです。
慎重に、、、慎重に、、、


3. 多目的ブイ投入

波の構造を観測しています。
船の上は自分だけではなく、多くの研究者、船員の方がいます。
全員が協力し合うことが大切です。


4. CTD観測

海中の深度1mごとの塩分、水温、流速などの連続プロファイルを観測しています。




5. 観測終了!

充実した10日間の観測も終わりました。
研究室に帰り、分析します。




6. データを可視化

取得したデータをプログラミングによって可視化、分析していきます。
プログラミングは先生方が丁寧に教えてくれるので大丈夫です(Pythonゼミという授業があります)。


7. 航路と海面水温

衛星データから取得したデータを可視化しています。
黒線は航路、コンターが海面水温です。



8. 海面高度と流速

黒潮流路で流速が大きいことが分かります。





9. 緯度と潜熱フラックスの関係

縦軸が潜熱フラックス(W/m2)、横軸が緯度。
黒潮域(赤線)で高くなっていることが分かります。
今後はこの要因を探っていく予定です。