東京大学大気海洋研究所 海洋生物資源部門 環境動態グループ

研究活動

研究活動(黒﨑大生)

        

耳石および眼球の安定同位体比を用いたマアジの回遊特性に関する研究

        
マアジの大産卵場が台湾の北西部に形成されるのが知られています。
しかし、日本沿岸に地付きのマアジも存在し、沿岸域でもマアジは産卵しています。
実際に、日本近海のマアジのどの程度の部分が地付きのマアジが産卵したものに由来するのかわかっていません。
そこで、日本海のマアジに注目し、日本海のマアジの由来が、日本沿岸なのか台湾北西部なのか調べるために、耳石の酸素安定同位体比と眼球の窒素安定同位体比をあわせて分析することを計画しました。
耳石の酸素安定同位体比は、海水に含まれる酸素安定同位体比(降水,蒸発によって同位体分別が起こるので結果的に塩分と良い関係性があります)と水温に依存することが知られています。そのため、耳石の酸素安定同位体比から推定される地理的位置は等温線、等塩分線に依存するため、東西に広く広がる問題がありました。
そのため、本研究では、耳石酸素安定同位体比とは独立な眼球の窒素安定同位体比を同時に用いることで、由来を絞り込むことを目的としました。


1. 耳石サンプル処理

調査船で採取したマアジのサンプルから耳石を取り出し、樹脂で包埋します。





2. 日周輪解析

耳石には1日に一つ日輪が形成される特徴から、その個体の日齢を明らかにすることができます。
本研究では耳石解析装置を用いてマアジの日輪を一つずつ慎重に読んでいきます。


3. 切削

耳石解析装置で解析した日輪に沿って高精度マイクロミリングシステムを用いて耳石を切削します。





4. 耳石酸素安定同位体比の分析

切削して採集した耳石の粉の酸素安定同位体比を大気海洋研究所内の分析装置を用いて分析します。


5. 眼球サンプル処理

マアジの頭部から水晶体を取り出します。




6. ピーリング

層状の構造の眼球を時系列に沿って分析するため、一層ずつ向いていきます。



7. 眼球安定同位体比の分析

海洋研究開発機構の共同研究者にご協力いただき、眼球を一層ずつ微量分析装置を用いて分析していきます。

8. 8. 経験環境の推定

耳石、眼球の安定同位体比分析の結果から経験環境を推定していきます。