東京大学大気海洋研究所 海洋生物資源部門 環境動態グループ

研究活動

研究活動(石村拓未)

        

耳石及び眼球を用いたサンマ当歳魚の経験環境の推定方法の開発

        
現在、地球温暖化が海洋生物の動態に与える影響が極めて高いと認識されています。
しかし、これまでに生息環境に変化が起きていたとしても、水温の上昇が直接影響していたのか、餌を通して影響していたのか、あるいは全く別の要因で影響が出ているのか不明でした。
サンマも地球温暖化によって影響を受けていることが懸念されています。
サンマは国際的に重要な資源です。
しかし、近年漁獲量が著しく減少しており、かつ漁場が従来と異なる海域に形成されおり、その原因は不明なままです。
魚類の経験環境を推定する手法として、耳石の酸素安定同位体比の分析手法があります。 しかし、この分析手法では、経験環境から推定される地理的位置が東西に広く描写される問題がありました。
そこで、本研究では眼球の窒素安定同位体比の分析結果と合わせ、地理的位置の推定範囲を絞り込むことを目的とし、分析を行っています。


1. 耳石サンプルの処理

調査船に乗船し、サンマを採集し、その耳石、眼球を使います。
耳石はサンマから摘出した後、包埋材で固定します。



2.日周輪解析

耳石から得られる情報として、その個体の日齢も含まれます。
サンマの耳石は小さく、日周輪は読むことが難しいとされており、SEM(走査電子顕微鏡)を利用して慎重に読んでいきます。



3. 切削

日周輪解析で得た情報を参考に、高精度マイクロミリングシステムを使って耳石を切削していきます。


4. 眼球サンプルの処理

頭部から眼球(水晶体)を摘出します。


5. ピーリング

水晶体は層状の構造をしているため、ピンセットを使って丁寧に一層ずつ剥いていきます。


6. 眼窒素安定同位体の分析

海洋研究開発機構の共同研究者の方に協力して頂き、微量分析装置を用いて一層ずつ分析していきます。


7. 酸素安定同位体の分析

京都大学の共同研究者に協力して頂き、微量分析装置(MICAL3c)にて、分析を実施します。



8. 経験環境の推定

耳石の分析結果と眼球の分析結果を合わせてサンマの経験環境を特定していきます(図は酸素安定同位体比のみでの描写)。
今後、眼球のアミノ酸の窒素同位体比を分析し、分布範囲の推定を絞り込む予定です。