東京大学大気海洋研究所 海洋生物資源部門 環境動態グループ

研究活動

研究活動(尾松弘崇)

        

研究テーマ:風波とうねりが共存する場合のうねりによる風波の発達と抑制の実態の解明

        
海洋の波浪とは、その場の風によって発達段階にある比較的短周期の「風波」と、風波が風域を離れるか、もしくは風が止みあるいは風向の急変によって風の影響を受けなくなり減衰しながら伝播している長周期の「うねり」の総称です。         
ハワイの海岸に押し寄せる大波が、南大洋の暴風圏で発生して伝播してきたうねりであることはよく知られています。三陸のリアス湾に注目すると、湾内の波浪は、沖合で発生して湾内に伝播してきたうねりの影響が強いことが以前から知られており (例, 川口他, 2011)、岩手県大槌湾を対象とした最近の研究では、湾内で観測された波浪のエネルギーの約7割がうねりに起因することが分かっています (Komatsu and Tanaka, 2017)。         
興味深い波浪の現象として、うねりの伝播方向と同じ方向に吹いた風で生じた風波は、うねりが無い場合に比べて風波の発達が抑制され (e.g., Mitsuyasu, 1966)、逆に、うねりの伝播方向と逆向きに風が吹くと、うねりが無い場合に比べて風波の発達が促進される (Mitsuyasu and Yoshida, 2005) ことが、水槽実験による従来研究で知られています。しかし、この現象の満足のいく力学的解釈は未だなされていません。
        
本研究では、風波とうねりが共存する場合の、うねりによる風波の発達の促進と抑制の実態を解明することを目的とします。そのため、大槌湾内に係留設置した観測ブイで4年8か月にわたり計測された海上風と波浪の連続データを解析し、さらに、沿岸域を対象とした波浪モデルを用いて湾内における風波の発達過程を推定します。
        

        


1. 観測ブイ

岩手県の大槌湾湾内に設置された観測ブイで風と波の観測をします。


2. 風について

観測されたデータを解析してどんな風が吹いているのかを調べます。


3. 波について

どんな周波数の波がどちらへ進んでいるのかという二次元スペクトルというものを算出します。


4. 解析

風と波の観測結果を解析することで、どのような風速・風向、波高、波向のときに風波の発達が促進・減衰するのかを解析していきます。

5. モデルを用いた数値実験

既存の波のモデルには、うねりによる風波の発達の促進・減衰は記述されていません。既存のモデルの出力と観測の解析結果を比較する予定です。