世界各地の気候に大きな影響を及ぼす太平洋のエルニーニョによく似た大規 模な大気海洋相互作用現象が、インド洋にも存在していることがSaji et al. (1999)によって発見され、「ダイポールモード」現象と命名された。この現象 が発生すると、東インド洋熱帯域に正の海面水温偏差、西インド洋熱帯域に負 の海面水温偏差が現れる。そして、インド洋沿岸諸国だけではなく、ヨーロッ パや日本の気候にも影響を与えることがわかった。したがって、ダイポールモ ード現象を理解することは、気候変動の予測可能性の向上につながると言え る。しかし、この現象の発生の仕方が10年スケールで変動することは知られ ているものの、その原因についてはまだ解明されていない。そこで、現実の大 気と海洋を比較的良く再現できる高解像度大気海洋結合モデルの結果を用い て、その詳細を調べた。このような長期変調には、熱容量の大きい海洋が重要 な役割を果たしていることが予想されるため、海洋の熱収支解析を行った。そ の結果、外的な要因[(1)南インド洋の亜熱帯高気圧の変動に伴い、風系が 変化することによって南向き熱輸送量が変動、(2)エルニーニョ/南方振動 に伴い、西太平洋の水位が変化することによって太平洋からインド洋へ熱を運 ぶインドネシア通過流が変動]の長期変調が重要な役割を果たしていることが 明らかになった。 |