北太平洋中央モード水は亜熱帯循環の北縁で形成され、循環の 流れに運ばれて、亜熱帯循環中央部の水温躍層下部に分布する。 この水の形成域の構造はこれまで主に気候値を用いて調べられてきたが、 その位置、および形成域と亜熱帯循環北縁の前線構造との関係を より詳しく調べるために、気象庁の165E定線で観測されたデータを解析した。 その結果、形成域はこれまで知られていたよりもずっと西まで伸びており、 少なくとも155Eまで達していた。また、形成域は黒潮続流前線と 黒潮分岐前線の間、および黒潮分岐前線と亜寒帯前線の間に位置し、 そこでポテンシャル密度25.8-26.2 kg m-3と26.3-26.4 kg m-3を持つ 2種類の中央モード水が形成されていた。この形成が亜熱帯循環全体に おける中央モード水の分布にどのように反映されるか、さらに WOCE Hydrographic Programのデータを用いて調べた。2種類の 中央モード水の移流経路は日付変更線の東で大きく異なっており、 亜熱帯循環東半分では重い中央モード水が軽い中央モード水の 外側に位置している。これらの結果は、亜熱帯循環北縁付近の 前線構造、特に黒潮分岐前線の存在が中央モード水の特性と分布の 決定に重要な役割を果たしていることを示している。 |